今回は資格取得を経て、キャリアアップに成功したRioさんに取材しました。
日商簿記1級や税理士試験の簿財に合格した勉強法、キャリアアップの秘訣について伺います。
Rioさん:日商簿記1級、
簿記論、財務諸表論
キャリアアップで資格試験に挑戦。
複数の業種の課長職として多くの経験を積んでいる。
2011年 日商簿記1級合格
2012年 税理士試験 財務諸表論合格
2015年 税理士試験 簿記論合格
利用予備校:大原簿記専門学校
趣味:ゴルフ、美味しいお店巡り、お酒
※取材当時の情報です。
両親からの一言で税理士を志す
大学卒業後、5年以上経理の仕事をしている中で、今後のキャリアをどのように築いていくか悩んでいました。
両親に相談したところ「経理でキャリア形成するのなら税理士くらいにはなりなさい」と言われたことがきっかけで、税理士を意識しました。
税理士の受験資格の一つに、日商簿記検定1級又は全経上級合格者があります。
税理士の簿記論では商業簿記は勉強しますが、工業簿記・原価計算は勉強しません。もともと工業簿記が苦手で、克服したい気持ちがあったので、まずは日商簿記1級を勉強してみようと思いました。
工業簿記・原価計算の考え方はとても役立つので、勉強してよかったと感じます。
ただ私の場合、日商簿記1級に苦戦し、5回目の受験で合格。2年半ほどかかりました。
最短で税理士を目指す場合、受験資格があるのであれば簿記論から始められることがお勧めです。
転職で勉強できる環境作り
当時、勤めていた会社は、終業時間が19時で残業もありました。
働きながら勉強するのは難しいと考え、思い切って退職。
17時終業で残業のない派遣の仕事に就き、「日商簿記1級に合格したらそれを武器に正社員として転職をしよう」と考えました。
日商簿記1級の勉強は会社から近い大原に通いました。
恥ずかしい話ですが、学生時代にあまりきちんと勉強してこなかった為、まずは勉強方法を試行錯誤することから始めなければなりませんでした。
派遣先は大手製薬会社で、経理部だけで50人以上いる大企業でした。社員の中には税理士もいましたし、日商簿記1級や税理士を目指し勉強している方も多くいました。
そのような方々と分からないことを聞き合ったりできる「仲間」として、一緒に勉強できたのは大きかったです。
試行錯誤で辿り着いた勉強法
日商簿記1級の勉強は、当初、問題集の1から順番に解いていく網羅的な勉強方法を取っていました。
ですが、効率が悪く自分の苦手なところが試験前でも苦手なままで本番を迎えてしまいました。
勉強方法を試行錯誤していく中で、苦手な部分や曖昧な部分、好きではない科目を集中的に勉強する方法に変えていきました。
自分が「苦手だな」「出題されたら嫌だな」と思う論点は、他の受験生も同じように苦手に感じる論点だと気づきました。
そのような論点が解ければ他の受験生と差をつけられる、まさに「お宝」です。
最初の頃は、そのような論点があり過ぎてつぶしていくのが大変でしたが、時間をかけて苦手論点に取り組んでいきました。
基本、大原の参考書を使用していましたが、受験回数が多くなってくると他の問題集もできる余裕もできたので、ネットスクール社の「ラストスパート模試」を解きました。「ラストスパート模試」※はその時よく売れていた問題集でしたし、良い問題が多く何度も解きなおしました。(※現在は発売されていないかもしれません。)
日商簿記1級を取得し年収UP
日商簿記1級を取得して、最も効果を感じたのは転職に有利に働き、年収UPに繋がったことです。
30代、40代になっても日商簿記1級があれば比較的、転職先はすぐ見つかります。
そして、効率的な勉強をする習慣が身に付きました。
受験期間は土日でも大原簿記学校の自習室で1日中勉強するのが日課となっていました。
苦手だった勉強が苦ではなくなり、集中力も高まりました。
その後、宅建の資格を取る機会があったのですが、苦手論点をつぶす勉強方法で、半年の勉強で合格することができました。
税理士試験に挑戦
日商簿記1級合格後、正社員に転職し税理士試験の学習をスタートしました。
資格の大原からの通いやすさや残業時間など勉強しやすさも念頭に選んだ会社です。
税理士は、両親からの勧めで考え出したキャリアでしたが、特に下記の2点に魅力を感じました。
定年がないこと
現在の定年は65歳前後ですが、周りの60代の方々はまだまだ元気に働ける方が多いです。
そのような中で嘱託になり給与が大きく落ちてしまう、それでも会社に頼らざるを得ないというのは心許ないと感じます。会社勤めだと定年がありますが、士業は定年関係なく働き続けることができるのが魅力に感じました。
事務所を持って働けること
自分の事務所を持つことができる仕事はなかなかないので、税理士は魅力的な仕事に思えました。
会社に所属する働き方よりも、自分の意志や責任で働ける場所を求めたというのも理由の一つです。
資格の大原のメリット
税理士試験の予備校は、大原の通学コースに通いました。
大原はTACと並ぶ税理士試験の二大予備校ですが、学校選びに悩む人は多いと思います。
私が大原の税理士講座に通って感じたメリットは下記の通りです。
資格の大原のデメリット
大原に通う中で、デメリットも感じました。
通っていて感じたデメリットは下記の通りです。
日商簿記1級から簿記論に挑戦
税理士試験の簿記論は2回目の受験で合格しました(H26不合格A、H27年合格)
私の場合、日商簿記1級取得後の簿記論だったため、新規論点は殆どありませんでした。
税理士試験の簿記論は、大問3の総合問題が最も解きやすく、得点しやすく感じました。
なので、総合問題の攻略、具体的には考えなくても勝手に手が動くくらい繰り返し解くように勉強しました。
退職引当金の問題が出たら手が勝手に必要なT勘定を書いている、というイメージです。
あとは税制改正がされた内容が出る可能性は高いので、改正論点はきちんと理解するよう努めました。
「理解」を極め財務諸表論に一発合格
財務諸表論は1回で合格できました(H24合格)
財務諸表論の計算問題は簿記の知識や実務経験があれば、比較的簡単に解ける内容が多いと思います。
財務諸表論は理論の学習が肝だと感じます。自分に合った理論の覚え方を早い段階で掴めるかどうかが合否を分けるポイントになるのではないかと思います。
私の場合は、内容を理解することで覚えていきました。
理解がなくては暗記にも時間がかかり、応用問題の対応も出来ません。
まず、内容を理解し「この理論を誰かに説明するにはどのように話せば分かりやすいか」考えます。そして整理できた内容を、口に出して話してみます。ご家族やパートナーなどに聞いてもらうのが最も良いと思います!
理論の中で、最後までどうしても納得できない論点がありました。講師に質問したり、インターネットで調べたり、本を探してその部分を読んでみたり、同じ受験仲間に聞いたりと、理解に努めました。
その論点がまさに出題され、一度で合格することができました。
税理士試験を断念
実は今は税理士を目指していません。税理士を勉強している期間にできた友人は、あれから8年程たちますが、まだ税理士になれていません。それを考えると諦めてよかったと思う一方で、税理士になることは私の夢だったので、税理士になれなかったという事実は、一生悔やみ続けるだろうと思います。
ですが、今の仕事は楽しいですし、簿記論と財務諸表論を取得しているだけでも転職には有利に働きます。
法人税法と消費税法は1年間勉強しましたが、その時の知識があるので、税務申告もできます。勉強して無駄なことは何もないと感じています。
日商簿記検定1級や税理士の科目合格等の有資格者であれば、比較的転職しやすい状況です。
人材不足は殆どの会社での課題となっており、更には40代前後の中間管理職はなかなか見つからないと採用担当者に聞きました。入社後すぐに課長職になることに抵抗がない方であれば、40代以上でも十分に転職は可能だと思います。
しかし、面接で残りの科目も取得し税理士になるかどうかを聞かれることが多かったです。その気がないと答えると、マイナスポイントとなる可能性もあるかもしれません。
簿記論・財務諸表論が合格できれば、簿記の知識は保証されます。実務でもすぐに知識を活かすことができるので、勉強しながら仕事をしていると、知識を経験として活かせることを実感でき、とても楽しかったです。
就職活動について
転職経験が多いので、多くの媒体を利用しました。
転職エージェントを利用した方が、残業時間など聞きにくいことをエージェントを通して聞くことができますし、年収の交渉もスムーズでした。
私は、資格を取る度に転職を繰り返してきました。一つの企業にいるよりも恐らく年収は大きく上がっていると思います。
財務経理は小企業・中小企業・大企業で仕事のやり方がかなり違うと感じます。
どの規模の経理も経験したため、どの規模の経理が自分に合っているか分かりました。企業を渡り歩いていく中で、残業時間や働き方も企業によって様々だと感じました。
自分の生活スタイルや大事にしたいもの、そして自分の性格や適性に合った企業を選ぶ為には、多数の企業での経理を経験するのも一つではないかと思います。
経理の仕事の魅力と惜しい点
財務経理というのは、企業ありきの仕事です。税理士のようにそれだけで独立できる職種ではありません。
ですので、どうしても企業に属さなければいけないというのが経理の惜しい点です。また、よほど大きな企業でない限り、5年以上勤めるとマンネリ化してきます。
しかし、勉強した知識をそのまま活かせることが財務経理の楽しさです。
最近では経理のDX化ということで、経理の自動化や効率化が進んでいます。
これにより退屈なルーティンワークにそれほど時間をかけず、決算やシステム導入などのプラスアルファの仕事に時間を割くことができるようになっていると思います。
電子帳簿保存法などで、紙の保存もなくなってきているので、経理が以前よりスッキリしてきている印象を受けます。
経理であってもITの知識が必要とされる時代になっていると感じます。
インタビューまとめ
- 苦手箇所を集中的に勉強し合格を勝ち取る
- 自分に合った勉強法を早く掴めるかどうかが合格のカギ
- 簿記論と財務諸表論の合格は転職には有利
- 勉強した知識をそのまま活かせることが財務経理の楽しさ
- 転職エージェントの利用がオススメ